意外?若い世代が「加害者」になるハラスメント─Power Crazy(パワークレイジー)と人間性の関係を考える

  1. ハラスメントの 意外な加害者とは?

 

 ハラスメントというと、「昭和世代の古い価値観を引きずる年配上司」が加害者であるイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

確かに、かつては “叱ること” が教育であり、 “厳しさ” が美徳とされた時代がありました。ところが最近、さまざまな現場で見聞きするのは、若い世代によるハラスメントの増加です。今回は、このことについて考えてみたいと思います。

 

 いわゆる「人権教育」や「ダイバーシティ教育」を受けてきたはずの20代・30代の人たちが、意外にも、部下や取引先、あるいはサービス業従事者に対して横柄な態度や無神経な言動をとるケースが目立つようになっているのです。

 

 これはいったい、どういうことなのでしょうか?

 

 

 

  1. 現場で見た若手の横暴なふるまい

 

筆者自身、これまでのさまざまな業界での経験や、起業を通じて多様な世代の方々と関わる中で、若い人たちによる、次のような思いもよらぬ場面に、少なからず遭遇してきました。

 

・社内会議で、若手のリーダーが他のスタッフの意見を聞かずに一方的に結論を下す

・自分より立場の低いスタッフや取引先に、ため口や命令口調で接する

・飲食店で、混雑やミスに対して理不尽に怒り、声を荒げる

・SNS上で、自分の成功体験を誇示しつつ、他者を見下すような投稿を繰り返す

 

たとえば、ある30歳のマネージャーは、職場で「なんでそんなに時間がかかるの?」「だから君はダメなんだよ」といった言葉を日常的に部下に投げかけていました。場合によっては、顧客の前で、大声で叱責するような激しい口調で、ということもありました。無意識のうちに、自分が“上の立場”であることを盾にして、相手の心を押しつぶしてしまっているのです。

 

 

 

  1. なぜ若い人でも加害者になってしまうのか

 

 これは果たして、若者の「心がけが足りない」「もともとの性格」あるいは「気持ちに余裕がない」だけの問題なのでしょうか?

 

 実は、こうした行動の背景には、「権力が人のふるまいを変えてしまう」という心理メカニズムがあると考えられます。

 

 ■「 Power Crazy(パワークレイジー)」とは何か?

 

Power Crazy(パワークレイジー)とは、文字通り「権力に酔ってしまった状態」を指す俗語です。誰かの上に立つ、自分の意見が通る、他人を動かせる──そうした「力を持った」という感覚が、徐々に人のふるまいを変えていきます。

 

 ・ちょっとした失敗に過剰に怒ってしまう

 ・他者の意見を「間違い」として否定してしまう

 ・自分だけが正しいと思い込んでしまう

 ・他者の立場に想像が及ばなくなる

 

 こうした状態は、年齢や経験にかかわらず、誰でも陥る可能性があります。「立場が上がることで、人格も成長する」と思いがちですが、現実にはそうとは限りません。だからこそ、「力を持ったときこそ謙虚に」「強い立場になったときこそ自分を疑う」── そんな自己抑制と内省が、現代のリーダーには求められているのです。

 

スタンフォード監獄実験に見るPower Crazyの証明

 

 1971年にアメリカで行われた「スタンフォード監獄実験」では、被験者を「看守役」と「囚人役」に分けたところ、数日後には看守役の学生たちが暴力的・支配的になり、深刻な人権侵害を引き起こしました。この実験は、「人は権限を与えられると、簡単に他者を支配したくなる」ということを示す象徴的な事例です。

 

  この実験の詳細については、スタンフォード監獄実験(Wikipedia)をご覧ください。

 

 これはフィクションではなく、今の職場や日常でも起こりうる現実です。

 

  1. 教育の力で“Power Crazy”を防ぐ

 

 Power Crazy(パワークレイジー)は、誰にでも起こりうる心の罠です。決して、若さや性格、意識の高低だけでは判断できない 人間の本性が引き起こす現象です。だからこそ、個人の心がけに任せるのではなく、「組織の力」で予防と対策を行うことが極めて重要です。

 

ハラスメント研修は「年1回・全員必須」が当たり前に

  

 職場では、全社員を対象にしたハラスメント防止教育を、年に一度、必ず受講する仕組みにするべきです。

しかも、「任意」や「対象者限定」では不十分で、全職員悉皆(しっかい)で、未受講者にはペナルティがあるくらいの強い姿勢で臨むことが必要です。

 

 ・立場が変われば、感覚も変わる

 ・自分が「加害側」になっていないか、常に振り返る必要がある

 ・社会全体が、ハラスメントへの感度を高め続けることが重要

 

 このような教育は、一度受ければ済むという“免許皆伝”のようなものではありません。更新し続ける倫理観・自己認識のための「メンテナンス」と考えた方が適切です。企業や組織がその重要性を理解し、制度として組み込むことが、真に健全な職場環境づくりの第一歩です。

 

 

 

 

  1. チェックリスト:自分は大丈夫?

 

 もしかすると、この記事を読んでいるあなたにも、思い当たるところがあるかもしれません。以下のチェックリストに、一つでも「ドキッ」とする項目があったら、自分の言動を見直すサインかもしれません。

 

   無意識のハラスメント・チェック

 

 □ 忙しいとき、つい命令口調になってしまう

 □ 「なんでこんなこともできないの?」と口にしたことがある

 □ 自分の意見が否定されると、ムッとして黙り込んでしまう

 □ 自分が“正しい”という気持ちが強く、相手を見下す傾向がある

 □ 成果を自分の手柄にしてしまいがち

 □ 感情のままにLINEやメールで返信したあと、後悔することがある

 

  1. 被害者になったときの対応策

 

 一方で、もしあなたが若手リーダーや同世代の同僚からのハラスメントに悩んでいるなら、それは放置すべきことではありません。あなたの違和感は、きっと正しいのです。

 

  こんな対応があなたを守ります

 

 □ 記録を残す(メモ、日記、メール保存、録音など)

 □ 信頼できる上司や同僚に相談する

 □ 社内の相談窓口やコンプライアンス担当に報告する

 □ 場合によっては労働基準監督署や労働局、弁護士に相談する

 □ 心身に影響が出ている場合は、専門のカウンセリング機関へ相談を

 

 「年上の人ならまだしも、若い相手に対して言いづらい」──そんな遠慮が、あなたの健康や自己肯定感を蝕んでしまう前に、行動に移すことが大切です。

 

  1. 読者へのメッセージ

 

 最後に、読者のみなさんそれぞれに問いかけたいことがあります。

 

あなたが「加害してしまっているかもしれない」と感じたなら

 

  •  あなたの言動は、誰かを萎縮させていませんか?
  •    自分の“立場”や“優位性”に甘えていませんか?
  •    今日一日、誰かの気持ちに目を向けてみませんか?

 

 もし心当たりがあるなら、それは「恥」ではなく、「成長のチャンス」です。人は誰しも、無意識のうちに誰かを傷つけてしまうことがあります。だからこそ、大切なのは気づいたときに、自分を立て直す力です。

 

逆に、「これってハラスメントかも?」と感じているあなたへ

 

  •  最近、誰かの言動で心が重くなることはありませんか?
  •    指摘や注意ではなく、「人格を否定された」と感じることはありませんか?
  •    頑張っても報われない、相談しても無視される、そんな経験をしていませんか?
  •  「気のせいかも」「私が弱いだけかも」と自分を責めてはいませんか?

 

もし、どこかで「これはおかしい」と感じているなら、それはあなた自身の感性が発している大切なサインです。

 

ハラスメントの被害は、時間が経つほどに心と身体に影響を及ぼします。我慢を美徳にしないでください。声を上げること、誰かに相談すること、離れること──それは逃げではなく、自分を守るための行動です。

 

 

 

 

  1. 人間は誰でも変わってしまう可能性がある

 

 ハラスメントは、年齢や肩書に関係なく、誰でも加害者になり得るものです。若い世代の人が、知らず知らずに他者を傷つけてしまう場面も、決して珍しいことではありません。だからこそ、「自分は大丈夫」と安心せず、常に“他者の目線”を忘れずにいることが求められます。未来を担う世代だからこそ、力を持ったときこそ、人としての謙虚さとやさしさを持ち続けてほしいと思います。

 

 

9. もしこの記事が心に引っかかったら

 

  Think Free Counseling・東京では、職場での違和感や、誰にも言えなかった悩みに寄り添い、安心してご相談いただける環境をご用意しています。

「もしかして自分も…」「あの人の態度、やっぱり変かも」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。あなた自身を守ることが、何より大切です。